"And Now,For Something Completely Different!"ま、それはそれとして。

NavyFIELDのQ&A用に書き溜めていたネタ、先取りされちった(っTT)
というわけで、ちょろっと。

軍艦に使われる木材の話。

昔の軍艦*1の写真を見て、鋼鉄の軍艦なのに木を使ってるの?なんで?という疑問があると思います。
ですが、これは実用的な装備なんですよ?(まぁ、装飾的な意味を持つ場合も多いですが)


基本的な木甲板のメリットとしては、まず滑り止め。
鉄板のままだと、海水を被ってぬれた甲板は激しく滑ります。これじゃあ、甲板での作業が危なくて仕様が無い。

もうヒトツは、断熱効果。
ログハウスや木造住宅のキャッチコピーに良く使われていませんか?
「木の温かみのある〜」とかいうセリフ。
これは、寒いときでも木は熱を伝えにくい構造なので、触ってもすぐに熱が逃げないから暖かく感じられるわけですね。
で、熱をすぐに伝えて、かつ蓄えやすい金属だけで甲板を作られている船が、なにも対処をせずに南洋にでも行こうものなら・・・
甲板どころか、室内の壁や床でも目玉焼きが作れてしまいます。
いまの電力有り余って、クーラーも安価に搭載できる時代と違って当時は冷房機なんて贅沢品は一部のフネにしか装備されていませんでした*2
なので、直射日光照りつける甲板に、断熱材としての木材というのは実に自然なことですね。

Q.え、木って鉄よりも弱いから、船が弱くなるんじゃ?
・・・えーと、一応強度甲板は鋼製ですよ?その上に滑り止め&断熱材として貼っているのですから、強度的には特に問題になるようなことは有りません。
もっとも、「燃える」という点に関してはそのとおりで、ミッドウェーでボコボコにされた後の日本海軍では「居住性より難燃性」ということで引っ剥がされたりもされていますが。
特に有名なのは隼鷹の応急長のエピソードでしょうか。

なお、耐久性の高い木材は結構高級品なので、大量建造する小型艦の場合リノリウムとかで代用したりしてますね。

また、フネに使う木材にはもう一つ特殊なモノがあって、スクリューの推進軸のブラケットや水密部に、天然ベアリングとして使われていたり。
一番有名なのがリグナムバイタ。水に浮かない木材ですね。ただ、熱帯にしか自生しない上に成長が遅いので、かなりの貴重な資源といえます。
ちなみに、その代用としてつかわれたのはサトウカエデ。というか、メイプル。
あの甘いシロップを出す木が、こんなところに使われているとはなかなか知られていないかもしれません。

*1:一次大戦や二次大戦ごろ

*2:それも、人のためではなくて基本的には機械の冷却用です。まぁ、人はそのお零れにありつけるわけですが