FR77#3

新着をHF/DFにて捕捉。
クリップ:#1#2

【軍事】ミリタリー系創作スレ【兵器】2 より。
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1257136826/66-68

66 名前:666SQUADRON 投稿日:2009/12/12(土) 23:44:31 ID:6s9pxEt/
火曜日(二)
『ブロードソード指揮官より発令。エイブル小隊は敵右翼集団、ベイカー小隊は左翼集団を各自目標とする。シャーロット、私が先行して敵の編隊を突き崩すから分散した敵機を各個撃破して頂戴』
「“シュガーのS”了解」
中隊長の指令に了承の意を伝えたホームズは、次いで自身の遼機である“アップルのA”を呼び出した。
「聞いてのとおりよエイプリル、抜かりは無いわね?」
『クックックッ…』
ノイズの影響で邪悪さ三割増しの忍び笑いが帰ってきた。
『おーけーおーけー、一機たりとも生かしては帰しませんとも。“ルルイエの館で眠る御方”の名にかけて…』
「そ、そう…頑張ってね……」
脊髄に這い寄るコズミックでカタストロフな悪寒を意思の力で振り払い、無理矢理笑顔らしきものをでっちあげてみる。
大丈夫、ちょっと意味不明な発言があったり得体の知れない生物の皮で装丁された“秘密の創作ノート”−その内容を盗み見たW中尉は精神に深刻な障害を負って任務を解かれ、今もポーツマスにある海軍病院の一室で拘束衣を着せられ、「窓に!窓に!」と叫び続けている−を持っているだけで、エイプリル・ダーレスは666飛行中隊でも三本の指に入る腕利きパイロットなのだ。
何も問題は無い…多分。
「青分隊右悌陣、ひらけ!」
中隊長直率の四機が、海面すれすれを飛来するハインケル機の鼻先を抑える形で散開する。
タイミングは完璧だった。
ドイツ雷撃機隊にしてみれば待ち伏せを喰らった形だが、無論これは意図的に仕組まれたものではない。
種を明かすと夜明けとともに強まった波浪のため、大揺れに揺れる飛行甲板上で操縦士をコクピットに押し込めたまま待機を続けていた666飛行中隊が、海況がやや穏やかになった一時を捉えてすぐさま全機発艦し高度を取りつつあったまさにその時、KG−26が来襲したのである。
フィクションの世界ならご都合主義の謗りを免れない展開ではあるが、現実の戦場ではしばしば幸運の女神のエコ贔屓としか思えない事態が発生する。
淵田美津雄少佐率いる真珠湾空襲部隊がオアフ島のレーダーに捉えられながらも、本土から飛来するB−17と誤認されてしまったように。


67 名前:666 SQUADRON 投稿日:2009/12/12(土) 23:46:18 ID:6s9pxEt/
「かかれ(Tally−ho)!」
英国戦闘機乗り伝統の鬨の声を合図に逆落としに突っ込むグラマン戦闘機。
受けて立つドイツの爆撃機乗りが何を欠いたにせよ、それが勇気でないことだけは確かだった。
ハインケル機の機首と背部の風防ガラスから突き出た単装機銃が、一斉に細長い火線を吐き出し始めた。
襲撃する戦闘機パイロットの視点からだと、薄く煙の尾をたなびかせた曳光弾が飛来する様がリボンが飛んでくるように見える。
低空を直進するハインケル機と反航姿勢で降下するマートレット、被我の距離が三百ヤードを切ったところで横一線に並んだ英軍機の二十四挺の五〇口径機関銃が火蓋を切った。
銃弾が先頭機の操縦席を捉えると、He111型機の曲線ガラスで構成された優美な機首が砕け散る。
急激に機首を下げたハインケル機は、鼻先を海面に突き立てたかと思うとくるりとトンボ返りを打ちながら跳ね上がり、後続機を巻き込んで大爆発を起こした。
三年前のロンドン上空でポーランド中隊がやったように、666飛行中隊の前衛は正面衝突必至の突撃を敢行し、ただの一撃で堅固な防御陣形をズタズタに引き裂いた。
そして相互支援を欠いた裸の爆撃機を、後詰めの赤分隊が襲撃する。
シャーロットは右前方を横切る一機を標的に選択すると、じわじわと操縦桿に圧力をかけていった。
およそ戦争を題材にした文学作品には、実際の戦場を体験したものからすれば的外れな描写が多々見られるが、航空戦を題材にしたものにおいても例外は無い。
その筆頭が「叩きつけるような勢いでスロットルレバーを押し込んだ」とか「乱暴にフットバーを蹴り飛ばした」と言った類のそれである。
現実には航空機の操縦装置というものは、急激な機動であるほど男性器を愛撫するようにソフトかつ繊細に扱わねばならない。
重力の束縛から完全に解き放たれたように見える戦闘機も、その実エンジンとプロペラが生む推力と、翼の周囲の気流が作り出す揚力の絶妙なバランスによって空中に留まることを許されているに過ぎず、補助翼か方向舵をほんの数インチ余分に動かすだけで、無敵の戦闘機械はあっという間にあの世行き臨時快速になってしまう。
シャーロットの操る“シュガーのS”に追尾されたハインケル機は魚雷を投棄して離脱を試みるが、その決断は遅きに失した。
ブローニング機関銃が乾いた射撃音を響かせると、被弾した右エンジンから広がった炎が特徴的な楕円翼一杯に広がり、最後の力を振る搾るかのように浅い角度で上昇を続けた双発機は機首を真上に向け、ほとんど直立した姿勢を数秒間保ったあとストンと落ちて北海の黒い水の底に姿を消した。


68 名前:666 SQUADRON 投稿日:2009/12/12(土) 23:48:50 ID:6s9pxEt/
戦闘は十七分で終了した。
勇猛果敢なKG−26の挑戦は、太平洋で日米両軍が学んだ苦い教訓−空母レキシントン空爆を試みた高雄航空隊やナグモ機動部隊に挑んだ第八雷撃隊が身をもって証明した−を再確認する結果に終わった。
命中魚雷は一本も無く、戦闘機隊は二十二機、対空砲火は十三機の撃墜を記録した。
勿論戦果に誤認と重複が含まれるのは世の常で、戦後確認されたドイツ側の記録では、この日の戦闘でKG−26が被った被害は被撃墜十二機のほか四機が帰還途中で不時着水、帰着したものの修理不能機が七機であった。
意外なことにFR77所属艦船において最多撃墜記録を打ち立てたのは、ケープ・ハッテラス号であった。
ティンドル提督を激怒させた件の船長は独立独歩の気風に溢れた人物であり、他人のルールに従うよりも自分でルールを作るタイプの人間である。
彼はドイツ空軍の来襲必至と見るや、独断で船倉に山と積まれたソ連向け物資の開封を命じた。
「どうせドイツ野郎に向けてぶっ放すことに変わりはないんだしせっかくの武器を遊ばせておくことはないじゃないか」とは船長の弁である。
かくして輸送船の甲板にずらりと並べられたブローニング機関銃とボフォース砲とスチュアート軽戦車に配された俄か仕込みの砲員は、どうせ狙って撃っても当たらないだろうから下手に狙いをつけるよりもひたすら撃ちまくるよう言われ、その命令を忠実に実行した結果、当てずっぽうに張り巡らされたそれなりの密度を持つ弾幕の中に、飛行機の方から当たりにくるという冗談のような事態が生じたのである。
ケープ・ハッテラス号が誇らしげに発信した“ワレ敵雷撃機七機を撃墜ス”の信号に対し、戦隊司令が返信した内容は、全ての公式記録から抹消されている。

ちょっとまて!
ダーレスの縁者?とかが居るぞなもし。
あ、ふんぐるいむぐるうなふくとるかるるいえうがふなぐるふたぐん・・・